極上御曹司のイジワルな溺愛

人は見かけによらぬもの──

そんなことわざがあるけれど、それの代表格なんじゃない? と心の中で罵ってみる。

私だって正面切って笑って、文句のひとつでも言ってやりたい。でもそんなことを副社長にしたら、自分の首が危ないのもよく知っている。

自分の身は自分で守らなくて、誰が守ってくれる?

まさに今の私の状況がそれで。

いきなり家を追い出されることになった私は、これからの人生を自分自身で守らなきゃいけない。

なんて、ちょっと大袈裟かもしれないけれど……。

二十九歳にもなって不安いっぱいで、どうしようもなく溜息が漏れた。

「だから言っただろ、さっさと結婚しろって。そしたら追い出されることもなかったのに。でもまあそんなに深刻になるな。残り物には福があるって言うし、そのうち白馬の王子でも現れるだろう」

「いつ誰が言ったんですか、そんなこと」

人の気も知らないで。しかも“白馬の王子”とか、どの口が言ってんだか。

「遠山さんに迷惑かけないように、せいぜい頑張れ。じゃあな」

嘲笑ってそう言う顔は、頑張れと思っている人の顔じゃないと思うんですけど……。

なのに麻奈美の横顔は、恋い焦がれた人を見るような恍惚の表情で、開いた口が塞がらない。



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