極上御曹司のイジワルな溺愛
第三章
惚れた欲目?
「やっぱり冬は温泉だな」
日本三名泉のひとつ、某温泉に到着したのは、日も落ちかけた十七時。
高台にある老舗旅館の客室から見える景色に目を奪われていると、たくましい腕が背後から伸びてきてそっと抱きしめられた。
「やっと落ち着いて、二人っきりになれたな」
耳元で囁く聞き慣れた声に、ホッとして体が温かくなる。
でも次の瞬間──
うなじに熱い唇を感じ、一瞬にして体中に緊張が走った。
「な、なにしてるんですか!? くすぐったい……です」
蒼甫先輩と、ふたりで一泊旅行をする──
とうとう来るべき日が来てしまったと緊張は増すばかり。胸の鼓動も速まってきて、息まで苦しい。
旅館に着いた早々ですか? 抱きしめられるのは嬉しいけれど、さっき部屋まで案内してくれた人が、部屋係の仲居さんが挨拶にくるって言ってたよね?
そんな心配までして、頭の中はプチパニック状態。
「薫さんと里桜さんは、うまくいったんでしょうか?」
それ、今聞くこと?
わけがわからなくなって「あはは」とから笑いすると、私の体に巻き付いている蒼甫先輩の腕が動く。そのままクルッと反転させられると彼の顔がグッと近づいた。