極上御曹司のイジワルな溺愛
「ほんとに椛ってわかりやすい。何か期待してる?」
そう言って覗き込む顔がいちいち決まっていて、余計に腹が立つ。
「期待……なんてして、ませんし」
そうよ、期待なんてしてない。ただちょっと、そうなるのかなと思っただけ。意味合いがぜんぜん違うから、そのあたり間違えないでほしい。
目をキリッとさせ訴えるも、蒼甫先輩には伝わらなかったみたいで。
「まあ今すぐその“期待”に応えてやってもいいけどな、俺は飢えた野獣じゃない。今日までずっと待ったんだし、それが少し伸びてもどうってことない。それに、楽しみは最後にとっておく派だ」
「……最後にとっておく派」
そんな派閥、初めて聞いた。
ほけっと立ち尽くしていると、その頬に蒼甫先輩の唇が触れる。
「ほんとは唇にしたいところだが、止まらなくなりそうだからな。今はここで我慢だ」
蒼甫先輩はそういって私から離れ、座卓に用意されていた饅頭を食べ始めた。
なによ、俺は飢えた野獣じゃないとか言っておいて、ほんとは我慢してるんじゃない。
唇が触れた頬に手を当てれば、熱を帯びている。
蒼甫先輩はズルい。自分はスッキリした顔をして饅頭を食べてるけど、頬から全身に伝わりつつあるこの熱はどうしてくれるんですか?
なんて今伝えたら、すぐにでも襲われてしまいそうで。
諦めて溜息混じりに蒼甫先輩の向かえに腰を下ろすと、美味しそうなお饅頭に手を伸ばした。