極上御曹司のイジワルな溺愛

「ところで今日なんだけど」

蒼甫先輩が箸を置き、私に向き直る。

「はい。何かありましたか?」

急に副社長みたいな話し方をするから(間違いなく副社長なんだけど)、私まで部下のような態度になってしまう。

「会社からメールが入ってて、夕方に外せない仕事がひとつ入った」

これでもかと言うほどの大きな溜息を漏らし、肩肘で頬づえをつく蒼甫先輩を見て、思わず笑いがこみ上げる。

「なんで、そこで笑うんだ?」
「だって……」

今の蒼甫先輩の顔ったら。

テレビゲームを楽しんでいるときに『勉強しなさい』と横槍を入れられて、ふてくされる子供みたいだったから。

それって、私との時間を邪魔されて、残念だと思ってくれている証拠?

だったら嬉しいけれど……。

もちろんここで、駄々をこねるつもりもない。

「仕事なら、仕方ないじゃないですか。この忙しい時期に一泊旅行ができただけでも、良しとしましょう」
「わかってる。わかってるけどさ、そう物分りがいいのもどうだと思うけど」

そう言いながら朴葉みそを突付く姿を見て、可愛い!! と胸がキュンとなる私は頭がおかしいのだろうか。

私って、ギャップに弱いんだ──

昨夜もそうだけれど、改めて自分の新しい一面を発見して驚くばかりだ。



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