極上御曹司のイジワルな溺愛
仲居さんオススメの観光地をいくつか周り、途中で美味しいお蕎麦の御膳を食べ途中サービスエリアでお土産をいつくか購入すると、帰宅の途につく。
「急がせてしまって悪かったな」
「そんな、何謝ってるんですか。十分楽しませてもらいました」
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうと言うが、時計はもうすぐ午後四時になろうとしている。雅苑には、あと十五分ほどで到着だ。
仕事なら仕方がない。
朝はそう言ったけれど、離れる時間が近づいてくると寂しさが募ってきてしまう。
どうせ今夜も、同じベッドで寝るんじゃない──そう言われてしまえばそうなのだが、昨日今日と思いがけない夢のような時間を過ごしたせいで、離れがたくなってしまったみたいだ。
「やけに静かだな」
自然と口数が減った私を見て、赤信号で車を止めた蒼甫先輩がフッと含み笑いする。
蒼甫先輩、明らかに面白がってる。また心の中を読まれてしまったんだろうか。
人の気も知らないで──
ぷいっと顔を背け、窓の外に目を向ける。と同時に右腕を取られ、体が引き寄せられた。
「仕事が終わったらすぐ戻る。心配するな、今晩もたくさん愛してやる」
「な、な、なに言って……っ」
そういうことじゃないんですけど……と言おうとした唇は、蒼甫先輩に塞がれる。
「も、もう……」
こんなところで恥ずかしいと思うのに、どこか嬉しい自分もいて。
何も言えなくなるじゃない──
蒼甫先輩の体にもたれかかると、彼は満足したようにまた車を走らせた。