極上御曹司のイジワルな溺愛
雨降って地固まる?
矢嶌家に到着すると、蒼甫先輩は手慣れた様子で駐車スペースに車を停める。
「あっ!」
「何ですか、急に」
蒼甫先輩はなにか思い出したように大声を上げ、スマホをタップした。
「そう言えば、兄貴からメールがきてたんだった。今晩一緒に食事でもどうだって」
「そうなんですか……ってことは?」
「ああ、里桜さんと仲直りしたみたいだな」
そうだったんだ。良かった……。
蒼甫先輩との時間はとても有意義なものだったけれど、薫さんと里桜さんのことを忘れていたわけじゃない。大人なふたりのこと。きっと良い方向に進むと思っていたけれど……。
「嬉しい。って蒼甫先輩! そういう大事なことは、もっと早く教えてください」
「言う暇なかったんだよ。なんだ、俺との時間は大事じゃないのか?」
「そんなこと言ってないじゃないですか」
どうしてそうなるのか。比べることじゃないと思うんですけど。
困った人だと溜息をつくと、頭をコツンと小突かれた。
「で、どうするんだよ。行くのか? 行かないのか?」
「もちろん、行くに決まってるじゃないですか。薫さんはともかく、里桜さんに早く会いたいです」
直接会って、良かったですねと伝えたい。きっとアメリカでは奈々ちゃんも、心配しているはずだ。
「兄貴はともかくは、よかったな。俺も仕事が終わり次第行くつもりだ」
「はい、待ってますね」
膝の上に置かれた蒼甫先輩の手に自分の手を重ね、微笑みを向けた。