極上御曹司のイジワルな溺愛
ウィークリーマンションで暮らすことになって、ひとつだけ良いことがあった。それは叔父が所有するウィークリーマンションが、職場から近かったこと。
地下鉄ならひと駅、歩いても十五分。天気がいい日は歩くことを心がけている。
でも今日はそんな気力も起きなくて、地下鉄に乗り出社。従業員出入り口で麻奈美を見つけると、声を掛けた。
「麻奈美、おはよう」
「あぁ椛、おはよう。ってあんた、顔色良くないけど大丈夫?」
「そう? ここんとこ式が続いて、ちょっと疲れてるだけだから大丈夫」
ふらふら感は収まっているし、このくらいなら気の持ちようでなんとかなる。麻奈美と一緒にエレベーターに乗り込み、スタッフルームのある四階のボタンを押した。
幸いなことに、今日はMCの仕事はない。月イチの社内ミーティングにお客様との打ち合わせ、あとの時間は進行表の確認などの細かい仕事だけだ。
いつものようにロッカーに荷物を置きいつもの席を陣取ると、ミーティングの資料に目を通す。
「はい、紅茶」
紅茶? 珍しい──
顔を上げると麻奈美が、心配そうな顔で立っていた。