極上御曹司のイジワルな溺愛
「う、うれし涙です。里桜さんと薫さんが仲良くしているのが嬉しくて、私が勝手に感極まってウルッとしただけで……」
だからもう怒らないでくださいね──の意味を込めて最高の笑顔を見せたのに。
「はあ!? 紛らわしいことするな」
と、頭をゴンとひと叩き。
「蒼甫、暴力はいけないよ。椛ちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
勝手に勘違いしたのは蒼甫先輩の方なのに、どうして私が叩かれないといけないわけ?
納得いかないけれど……。
でもちゃんと手加減してくれていたことに、気づかない私じゃない。きっと傲慢な蒼甫先輩なりの、照れ隠しなんだろう。
テーブルの上にある水を飲むと少し落ち着いたのか、蒼甫先輩は柔らかい表情へと変わっていく。
「蒼甫先輩、早かったですね。もう仕事は終わりましたか?」
「ああ。チャペルの改装のことで問題があったが、すぐに解決した。俺の手にかかれば難しい案件も、あっという間に終わる」
「そうですか」
蒼甫先輩の言っていることは間違ってないだろう。でもその俺様基質な態度、蒼甫先輩のことを王子様と想っている従業員のみんなが見たら、果たしてどう思うんだろうか。
話したい──
なんて悪いことを考えてひとりニヤついていると、何を勘違いしたのか里桜さんが顔を寄せ耳元でコソッと話し出す。
「嬉しそうね」
「え? そ、そうですか?」
まあ嬉しくないわけではないけれど。
頭で考えていたことをバラすわけにもいかず、話を別の方へと持っていく。