極上御曹司のイジワルな溺愛

「副社長に美味しいもの奢ってもらえるから、引き受けたんでしょ?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ」

決して食事につられてMCを引き受けたわけではない。あくまでも新郎新婦のため、新見さんのためだ。

時間もすれ違うことも多いだろうからと、仕事が落ち着くまでは自分の部屋で過ごすことにしたけれど、全く会えなかったわけじゃない。

それでもゆっくり過ごすことはほとんどなかったから、確かに蒼甫先輩との食事は楽しみだけど……。

「年内はあと三つだけだから頑張らないとね。麻奈美、コーヒーひとつ~」

私の言葉に麻奈美は「はいはい」とふたつ返事で応えると、コーヒーメーカーのボタンを押した。しばらくするとコーヒーの香ばしい香りが鼻をかすめ、癒やしの香りへと変わってゆく。

「今朝は副社長と一緒じゃなかったの?」
「うん。蒼甫先輩は神戸で打ち合わせがあって、朝イチで出かけていった。お手伝いの千夜さんも年末年始の休みに入っていないし、なんにも食べてないんだよね」
「ズボラな椛に逆戻りね。また倒れたりしないでよ」

嫌なことを言う。

唇を尖らせ麻奈美からコーヒーを受け取り、それを飲みながらパソコンの画面に目を向けた。

「あ、新見さんからメールだ。薬が効いて楽になったみたい。インフルエンザだから年内は休まないといけないけど宜しくって」
「そう、それは良かったわね。年明けからはバンバン働いてもらわないと」
「そう願いたい」



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