極上御曹司のイジワルな溺愛
* * *
「里中さん、今回は本当にお世話になったわね」
「そんなこと……。でも、おふたりのお役に立てて良かったです」
そう言うと、里桜さんと軽くハグを交わす。
「今日は僕にもしてくれる?」
薫さんはおねだりをする子犬のような目をして私を見つめているから、苦笑いが漏れてしまう。
「今回だけだぞ」
そう了承したのは、私の隣りに立っている蒼甫先輩。
本当にハグするだけで終わるんだろうか……。
そんな心配をしながらも、薫さんの前に一歩踏み出した。
「椛ちゃん、ありがとう。今度は里桜と奈々ちゃんも連れて帰ってくるからね。それまでは寂しい思いをさせちゃうけど、お利口さんに待っててね」
「そうですね。薫さんと里桜さんがいなくなると、ちょっと寂しいです」
顔を上げて薫さんを見ると、額に優しいキスが落とされる。
「ねえ里桜。このまま椛ちゃんも一緒に、アメリカに連れて行くっていうのはどう?」
薫さんは本気で言ってるのか、体を再び抱きしめられてしまう。
「えぇっ! 薫さん、ちょっと……」
「冗談だよ。そんなことしたら蒼甫に殺されかねないからね」
薫さんは私の体から腕をほどくと、おどけた表情を見せる。
確かに最近の蒼甫先輩を見ていると、殺すまではいかなくても何かをしでかしそう。今も眉間に深いシワを作って、薫さんを睨んでいる。