極上御曹司のイジワルな溺愛

「薫さんも言ってたけど、年が明けたら今度は奈々も一緒にこっちに来るわ。蒼甫さん、ブライダルフェアのこと、よろしくお願いします」
「椛ちゃん、じゃあね~」

ふたりは幸せそうに微笑みあうと仲良く手をつなぎ、出発ゲートへと消えていった。

「行っちゃいましたね」
「兄貴がいると慌ただしくて困る。アメリカに戻ってくれて、せいせいしたよ。それにしても里桜さん、本当に兄貴
なんかでいいのか?」
「蒼甫先輩、弟のくせにそんなこと言ってもいいんですか? 人には好みっていうものがあるんですよ。それに薫さんにだって良いところのひとつやふたつ、あるじゃないですか」
「ひとつやふたつ、か。確かにあの能天気さは、俺にはないからな。稀にあれで仕事がうまくいく、不思議な話だ」

そして最後に「宇宙人みたいなやつだよな」と呟くと、私の手を取ってすたすたと歩き出す。

「今日の仕事は何時に終わる?」
「そうですね。順調に進めば、九時には上がれると思います」
「お前はプロだろ、間違いなく順調に進めろ」
「は、はい」

挙式披露宴の時間にシビアな蒼甫先輩のこと、順調に進めろと言うのはいつものことだけれど。

何かあるのかしら?

と。不意に足を止め振り向いた蒼甫先輩が、私の耳元に顔を寄せた。

「兄貴がいなくなったからな、今晩からはあの家にまたふたりっきりだ。何も気にせず、椛が抱ける」
「抱け……っ!!」

驚き固まっている私に追い打ちをかけるように、蒼甫先輩が耳朶を甘噛する。

「蒼甫先輩、ここまだ空港です、よ……」
「誰も見てない」

相変わらず勝手気ままな蒼甫先輩を見て、薫さんがアメリカに帰ってしまったことを、さっそく後悔する羽目になってしまった。





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