極上御曹司のイジワルな溺愛
打ち合わせや事務仕事的なデスクワークならそれでもなんとかなるが、今日はそういうわけにはいかなかった。
「今日は挙式披露宴の仕事があります」
「知ってる。で?」
そう話している間も指を這わせ、私の体にゆっくりと甘い痺れを与えていく。
でも今日は、蒼甫先輩の誘惑に負けるわけにはいかない。
今日は以前から気になっていた、溝口さんと森さんの結婚式の日。結局あの後、打ち合わせや衣装合わせなど問題なく終わったのだけれど、私の中のもやもやは消えることがなかった。
「大事な……仕事なんです……」
蒼甫先輩の指の動きに耐えながら言葉を紡ぐと、蒼甫先輩の指の動きが止まる。
「そんなに大切な仕事なのか?」
私にとって仕事は、どの仕事も大切で。比べたり贔屓したり、より好みしているつもりは一切ない。
でもなぜか溝口さんの様子がどうしても気になってしまって、心の隅っこに引っかかったままとうとう結婚式当日を迎えてしまった。
「大事は大事ですけど、ちょっと気になることがあって」
「気になること?」
蒼甫先輩が眉根を寄せる。
溝口さんのことは結局、蒼甫先輩には話さずじまい。
そもそも私の思い過ごしかもしれないし、私のそんな気持ちだけで蒼甫先輩を煩わせることもない。
最終打ち合わせの様子も特に変わりなかったと麻奈美から聞いているし、結婚間近の女性によくある“マリッジブルー”だったのかもしれないと、一度は自分で結論づけた。