極上御曹司のイジワルな溺愛
「抱けない……」
「は?」
「椛を抱きしめたいのに抱けない。なんなら今すぐ身ぐるみを剥がして、襲いたいくらいだ」
「な、な、なんてことを言うんですか! 病院内で不謹慎です!」

いきなり何を言い出すかと思ったら、どうしてそういうことを平気で言うんだろう。個室だから良かったものの、ドアの向こうには廊下があって看護師さんたちが行き交っているというのに……。

恥ずかしさから全身が熱くなり、血液まで沸騰したのか傷口がズキンと痛む。

「あ、イッたぃ……」

左の肩口の辺りを押さえ、うずくまる。

「椛! 大丈夫かっ?」

蒼甫先輩が慌てて椅子から腰を上げると、心配そうに私の顔を覗き込む。
「そんな心配するくらいなら、変なこと言わないでください」
「変なことなんて一言も言ってない。椛のことが好きだから抱きたい、それのどこが変なことなんだ?」
「うっ、それは、その……」

逆に質問されて、言葉に詰まってしまう。

そんな私を見て蒼甫先輩は、ククッと楽しそうに笑った。

蒼甫先輩って、あなたって人は……。



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