極上御曹司のイジワルな溺愛
比翼連理?
「万全だと思っていたが、セキュリティーも強化しないといけないな」
「そうですね。もうあんな場面に出くわすのは、二度と御免ですから」
今でも私を刺した男が、包丁を持って立っていた場面を思い出すと傷が疼く。でも蒼甫先輩を守るためならいつだって……そう思わなくもないけれど、そんな事を言ったら蒼甫先輩にどやされてしまうからあえて言わない。
病院で二週間お世話になり、退院後は自宅で療養すること一週間。
その間蒼甫先輩は忙しい時間の合間を縫って、私の世話を甲斐甲斐しくしてくれ、そのお陰で体調はみるみるうちに回復。
でも肩口の怪我の方はかなり深くまで刺さったため今もリハビリに通っているけれど、完治には至っていない。
思わず溜息をつくと、それに気づいた蒼甫先輩が足を止めた。
「どうした? 辛いか? なんなら、あっちに戻ってもいいぞ」
あっちとは、雅苑の裏にある矢嶌家のこと。
蒼甫先輩は私に何かあるたびに酷く心配するから、こんなことを言ってはなんだけれど、少々息苦しい。
もちろんそれが蒼甫先輩の私に対する、愛情だと言うことはよくわかっている。わかっているけど、ここまでされると、どうにも子供扱いされているみたいで面白くない。