極上御曹司のイジワルな溺愛
これは夢?
夢──というよりは、イベントサークルで主催したジョギング『城ラン』開催のために、先輩と夜遅くまで準備をした懐かしい光景。
みんなの先頭に立って颯爽と物事を進めていく先輩の姿は、新入生として初めて参加した私の目にとても鮮明に映った。
なんで今さら先輩との思い出? と思わなくもないけれど、私にとって副社長はやっぱり先輩で、反抗的な態度を取ることはあっても今でも頼れる存在。
だから私は先輩のそばに居たくて──
そんなおぼろげな意識の中、おでこに何かが触れる感触に目を開ける。
「椛?」
声がする方にゆっくり顔を向けると不安げな表情をした副社長がいて、彼と目が合うとその瞳が微かに揺れた。
「……副社長?」
なんでそんな顔をしてるんですか?
初めて見る副社長の表情に、戸惑いを覚える。沈黙が苦しくなって目線を逸らすと、大きく息を吐いた。