極上御曹司のイジワルな溺愛
インカムで手の空いているスタッフに指示を入れ会場内をさまよう人を着席させると、進行表に沿って披露宴を進める。ところどころ時間配分は変わったものの、これで大筋の流れは変わらず花束贈呈に入れる……そう思っていたのに。
最後の最後で新郎の悪友たちが、一升瓶を片手に裸踊りを始めてしまったから目が点。
お祝いしたい気持ちはわかる。わかるけどあれは、お祝いというよりバカ騒ぎ。予定にはない余興を勝手に始めてしまうなんて前代未聞!
「頭が痛いわ……」
インカムからは『里中! さっさと終わらせろ!』と耳障りな声が聞こえ一方的に怒鳴られる──という最悪の終末を迎えてしまった。
***
「何がさっさと終わらせろ!よ。人の気も知らないで」
怒りの矛先が新郎の悪友から、インカムの声の主に変わる。
勝手なことばかり言って、だったら自分がやってみろって言うのよ。まったく、頭にくるったらありゃしない。
目を閉じていると頭の中に浮かぶのは、あの憎きヤツの忌まわしい顔。
「縁起悪いわ……」
急に寒気に襲われてブルブルと身震いすると、すっくと立ち上がりコーヒーメーカーのボタンを押した。