極上御曹司のイジワルな溺愛

せめて洗い物ぐらい手伝っておくんだったと今更ながら後悔していると、医務室のドアが開く音に顔だけ動かす。

「椛、貧血で倒れたって? 大丈夫?」

医務室に入ってきた麻奈美は副社長に「お疲れ様です」と挨拶し、彼と反対側の椅子に腰掛けた。

私、貧血で倒れたんだ──

初めてそのことを知り、自分の情けなさに溜息をつく。

「学生の頃からなんかひとつ抜けたところがあるとは思っていたが。貧血に栄養不足とか、このご時世に考えられん」

と、副社長がそう言えば、

「椛、あんた栄養不足だったの? ひとり暮らし始めてから、ちゃんとしたもの食べてた?」

と、麻奈美も呆れ顔だ。

ちゃんとしたもの……。

コンビニのパンにお菓子。これならと言えるものはウィークリーマンションに来た日に食べた、引っ越し蕎麦ならぬコンビニ蕎麦くらい。

これは口に出して言えないな……と笑って誤魔化す。

「椛、お前いい加減しとけよ。今日は打ち合わせが終わったあとだったからよかったものの、これが打ち合わせ中ならどうするつもりだったんだ?」

「どうするって……」

「自分の体のことだ、もっと考えて行動しろ。わかったな?」

「……はい」

反論の余地なし。

私の返事を聞くと副社長は何も言わず、医務室を出ていった。



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