極上御曹司のイジワルな溺愛
副社長が怒るのも無理はない。彼の言う通り私の管理不足で、体調不良でしたでは済まされないこと。
ここ最近、副社長の前ではうまくいかなことばかりで、溜息しか出てこない。
「情けない顔して。で、どうよ、体調の方は?」
「絶不調。今まで貧血とか栄養不足とか、そんなこととは無縁だったのに。やっぱり母は偉大だわ」
何もかもが、おんぶに抱っこ。全部母にやってもらっていたツケが、二十九歳になって回ってくるとは。
「椛、ここまでどうやって来たのか覚えてる?」
ここまで? うん? あれ? どうやって来たっけ?
目が覚める前の記憶をひとつひとつ辿ってみるが、何ひとつ思い出せない。
「誰かに迷惑かけた?」
麻奈美にそう聞くと、ニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべた。
「何よ、その顔は?」
「どうやってここまで来たのか知りたい?」
「知りたいに決まってるじゃない。もったいぶらずに、早く教えなさいよ」
「後悔しない?」
「後悔?」
一体麻奈美は、何が言いたいんだろう。詫びることはあっても、後悔することなんてなにもないはずだけど。