極上御曹司のイジワルな溺愛

すぐにコポコポと音がして部屋中にコーヒーの香りが漂い始めると、それだけで心が穏やかさを取り戻す。

砂糖とミルクをたっぷり入れて飲むのも好きだけれど、スッキリとしたい今の気分はブラック。香りやコク、苦味をひとりで味わっていると、突然スタッフルームのドアが勢いよく開いた。

「椛! お疲れっ!!」

気が緩んでいたところにいきなりの襲撃で、驚いてコーヒーを吹きこぼしそうになってしまった。

「ちょ、ちょっと麻奈美。もう少し静かに入ってこれないの?」

「落ち込んでるんじゃないかと思って心配して来てあげたのに、何よその言いぐさは?」

いかにも親友を思いやる良い女を醸し出しているが、麻奈美の顔は今にも笑い出しそうだ。

「どこが心配してるのよ。私で遊ぶのやめてくれる?」

同期入社の親友でウェディングプランナーの遠山麻奈美とは大学からの付き合いだが、気心の知れた女友達だ。こんなやり取りができるのも、親友ならではのこと。

「遊んでるのは私じゃなくて、インカムで怒鳴ってた“あの人”」

私の眉が、ピクンと跳ね上がる。



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