極上御曹司のイジワルな溺愛

麻奈美も前に言っていた通り、従業員や雅苑に入っている業者には愛想も良くて信頼厚いが、何故か私には風当たりが強い。

でも今日は、ちょっと感じが違うかも。

突然抱きしめたり不意にキスしたり、副社長がなんでそんなキャラにもないことをしたのかはわからないけれど。

職場じゃないからリラックスしているのか、よく喋るしよく笑う。学生の頃に戻ったみたいで、それはそれでなんかちょっと楽しい。

ふとみんなで笑い転げてたイベントサークルでのひとときを思い出し、懐かしさに頬が緩む。

「どうした? なんか楽しそうだな」

副社長の声に我に返ると、慌てて顔を真顔に戻す。面白いものでも見るように笑っている彼から目を逸らすと、大きな置き時計が目に入った。

「もう、こんな時間」

時計の針は、午後の十時をとうに回っている。
「やっぱり帰ります」

椅子から立ち上がり、副社長に頭を下げた。



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