極上御曹司のイジワルな溺愛

ん? 何、この匂い。

だしのよく効いた味噌汁の香りに、誘われるようにダイニングへと向かう。

確か千夜さんの来る時間は十時だったはず。もしかして今日は、早めに来てくれたとか?

廊下を小走りに進み、ダイニングのドアを開けた。

テーブルの上には焼き魚にだし巻き卵、冷蔵庫の中にあった煮物も何品か皿に綺麗に盛られ、二人分配置されている。

やっぱり千夜さんが来ているんだと、笑顔でキッチンを覗く。でもそこに立っていたのは……

「副社長?」

「お前は挨拶もろくにできないのか? 朝イチの挨拶はおはようございますに決まってるだろう」

「あ、え? はい。おはよう、ございます」

副社長がキッチンに立っているだけでも驚きなのに、あり得ない姿に絶句。

黄色い花柄のエプロン姿って……。

「椛、おはよう。これをテーブルに運んでくれ」

そう言って渡されたお盆の上には、さっきからいい香りを部屋中に充満させている味噌汁が載っている。

「美味しそう……」

って、違うし!

美味しそうな朝食に気を取られて、この状況のおかしさを見過ごすところだった。



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