極上御曹司のイジワルな溺愛
ここ何年、本気で付き合った男はいない。三年くらい前までは一夜限りの関係で体の欲求を満たしていたが、今はそれさえもご無沙汰な萎れ女だ。
恥ずかしい話、ウェディングMCとして人様の恋の手伝いばかりしていると、自分のことはおざなりになってしまう。
恋より仕事──
意識しているわけではないが、何故かそうなってしまうからなんとも悲しい。
こんなんだから三つ下の妹には先を越され、いつの間にか甥っ子姪っ子がいる伯母さん。母には早く結婚して孫の顔を見せろとうるさく言われ、父にはもう諦めたと引導を渡される始末。
私としては、結婚だけが幸せと思ってはいない。仕事のスキルを磨きステップアップを図ることだって、いわば女の幸せのひとつだと思っている。
そんなこと単なる強がりだと言う人もいるだろう。でも今の私には相手がいないんだから、こればかりはどうしようもない。
「祥ちゃん、生中もう一杯!」
居酒屋の店員で顔なじみの祥ちゃんに大声で叫ぶと、店の奥から「はい喜んでー」と返事が返ってくる。いつもと変わらぬ雰囲気にホッとしていると、あっという間に生中が運ばれてきた。
「椛さん、なんか嫌なことでもあった?」
祥ちゃんはまだ大学生のくせに感がいいのか、いつも的を射たことを言ってくる。