極上御曹司のイジワルな溺愛
「どれもこれも蒼甫先輩が作ってくれた料理は、凄く美味しいです」
嘘ではない。でも少し大袈裟に言い過ぎたかなと、誤魔化すようにだし巻き卵を口に放り込むんだ。
「それは良かった。じゃあ明日からは、椛に作ってもらうかな」
「へっ?……うぐっ!!」
蒼甫先輩の口から思ってもなかった言葉が飛び出し、だし巻き卵が喉に詰まる。
「大丈夫か?」
先輩から水を受け取り、慌ててそれを飲み干した。
「ゴホッゴホッ……ちょっと先輩! 急に変なこと言わないでくださいよ」
冗談も程々にしてほしい。
私が料理なんて、できるわけがないじゃない。それができていれば栄養不足や貧血で倒れることもなかったし、ここで暮らすことにもならなかっただろうに。
でも蒼甫先輩はテンパる私をよそに、真顔で話を続けた。
「昨日言っただろ。これからここで俺が、家事全般を叩き込んでやるって。聞いてなかったのか?」
聞いてなかったわけじゃない。右から左へと、受け流していただけ。