極上御曹司のイジワルな溺愛

だってそうでしょ。勝手に業務命令だとか言って、ここに住むことを強要して。その上、体調管理に家事全般叩き込むとか言われたら、耳を塞ぎたくなる気持ちもわかってほしい。

「叩き込んでやるって、本気だったんですか? そんなの無理ですって。お恥ずかしい話ですけど、ホントになんにもできないんです。包丁もほとんど持ったことないし……」

だんだん自分が情けなくなってきて、少しずつ声が小さくなってしまう。

「そんなことだろうと思ったよ。大丈夫だ、俺が手取り足取り教えてやる」

「手取り足取り……」

そう言葉を放ちながら、ニヤリと微笑む顔が……恐ろしい。

一体何を考えているのやら、蒼甫先輩には困ってしまう。

明日から私、どうなるの? 栄養不足や貧血は大丈夫でも、違う病気になってしまうかも。

お先真っ暗──

そんな言葉が頭に浮かび、憂鬱な溜息をつく。

「溜息なんてついてないで、朝飯早く食えよ。今日は忙しいからな」

忙しい? 確か今日は、蒼甫先輩も休みだったはず。



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