極上御曹司のイジワルな溺愛
こんなに美味しい朝食、本当はゆっくり味わいおかわりしたいところだけど。
朝食をさっさと食べて、ここから早く立ち去らねば!
味噌汁を飲み干し「ごちそうさまでした」と席を立つと、キッチンのシンクで洗い物を済ませる。
「じゃあ先輩、お先に失礼します。朝食、とっても美味しかったです」
よし、上出来。このままうまく逃げ切ろう。
そう思っていたのに。
世の中そんなに甘くない──
笑顔で挨拶も済ませダイニングから出ていこうとした私に、蒼甫先輩が呼びかけた。
「おい、椛?」
その芝居がかった口調と疑問形に、軽快だった足が止まる。
「は、はい?」
蒼甫先輩は、こんなときの私の心を読むのが得意だ。もしかして……
恐る恐る振り返る。
「逃げるなよ?」
「に、逃げる?」
「その、よそよそしい態度。お前、なにか企んでるだろ?」
バレてる……。