極上御曹司のイジワルな溺愛

しかも笑いをこらえている顔からして、私、完全に遊ばれてるよね？

「とにかくコレ、試着してみます。先輩は“あっち”で待っててください」

“あっち”を強調し紳士服の売り場を指さして、強制移動を促す。

店員につれられていく蒼甫先輩を確認すると、試着室のドアを閉めた。

試着室に掛けてあるスーツを、もう一度眺める。

やっぱり可愛い。

少し甘めのデザインをと思ってはいたが、ここまでビビッと惹かれるスーツに出会ったのは久しぶり。これなら結婚式のMCも、気分良く進められそうだ。

服を脱ぎ早速スーツに着替えると、まるでそれが自分のために仕立てたような着心地に満足感がこみ上げる。

途端。先輩に見てもらいたくて、居ても立ってもいられなくなる。

こんなことなら紳士服売り場に追いやるんじゃなかったと後悔していると、試着室の外から蒼甫先輩の声がした。

「椛、もう着替えたか？」

なんで？　いつからそこに？

慌ててドアを少しだけ開け顔だけ出すと、蒼甫先輩が腕を組んで待っていた。