極上御曹司のイジワルな溺愛

「まだ他に買うものはないのか?」

「え? ああ、そうですね」

何故持っていかれたのか、スーツが気になるところだけれど。もうひとつ買うものがある私は、そのまま紳士服売り場へと移動した。

「なんで、こっち?」

蒼甫先輩は、訝しげな表情で私を見る。

「それは……」

「彼氏にプレゼントとか?」

「ち、違いますよ!」

「だろうな」

わかってるなら聞くな!

心の中でそう叫ぶ。が、そう言えば彼氏にプレゼントなんて買ったことがなかったなと、ひどく落ち込んだ。

大学を卒業した頃は彼氏と呼べる人もいたけれど、今思えばお互いに本気だったのかどうかさえ疑わしい。

よく考えてみれば相手の誕生日も知らないんだから、プレゼントなんてするはずもなく。もらったことすらないんだから、お返しだって買ったことがない。

食事は割り勘、エッチは相手の古いアパート。どこかテーマパークへ行ったり、ふたりで旅行したなんていうキラキラな思い出さえないんだから、所詮それまでの関係だったんだと今更ながら思う。

なんとも、寂しいものだ。



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