極上御曹司のイジワルな溺愛
蒼甫先輩を見つめたって答えなんか出ないのに、ただなんとなく先輩のことをぼんやりと見上げた。
「おい、どうした? なんか目がおかしいぞ」
ピンッとおでこを弾かれ、その瞬間我に返る。
「もう、先輩! さっきから痛いことばかりしないでください!」
弾かれたおでこを擦りながら、蒼甫先輩を睨みつけた。
「手加減してやってるのに、痛いはずないだろ。大袈裟だな」
私が睨みつけているというのに、どういうわけか蒼甫先輩は楽しそうに微笑んだりするから、怒ってるのがバカバカしくて体の力が抜けてしまう。
まあ、いっか。
突然沸き起こった気持ちについては、今日のところは一旦保留。
その思いを私の胸の中にしまうと、蒼甫先輩からスーツとネクタイを受け取ってレジへと向かう。
「先輩、今日は良い買い物ができました。ありがとうございます」
「こっちこそ、ネクタイありがとな」
蒼甫先輩はネクタイの入った袋を見ながら、満足そうに微笑む。
お好み焼きは美味しかったし、良い買い物もできた。
朝からの急展開で思いもよらない日になったけれど、蒼甫先輩の笑顔に午前中の疲れも一気に吹っ飛び、軽やかな気分で帰宅の途についた。