ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~
「シイナ!!」
肩を揺さぶられているのに気づき、はっと目を開ける。
自分を覗き込んでいるのは、フジオミだ。
「うなされていた。大丈夫かい?」
「……」
脈打つ鼓動がやけに身体に響いて、シイナは咄嗟に答えられなかった。
ただ、重苦しさが肩までかかっている掛け布なのに気づいて、起き上がって押し退ける。
寝汗で、寝間着も寝具もべとべとだった。
気持ちが悪い。
何より、身体の震えが止まらない。
「シイナ?」
「寒いの……寒くて寒くて、堪らない……」
自分を抱きしめるように身を竦めているシイナを見て、
「なら、浴槽にお湯を入れてくる。身体を温めるには一番だ」
急いで寝室を出て行く。
だが、すぐにフジオミがバスタオルを持って戻ってくる。
「シイナ、これを」
大きなバスタオルがシイナの肩にかけられた。
そのまま、フジオミは浴室へ戻る。
のろのろと、シイナは濡れた寝間着を脱いだ。
そうして、乾いたバスタオルで身体を包む。
規格よりやや大きめのタオルはシイナの身体を膝までしっかりと覆ってくれる。
だが、寒気は止まらず、シイナはそのままベッドの端で身体を丸めた。
少しして、フジオミがノックをしてからベッドルームに入ってくる。
「シイナ、運ぶから、触れるよ」
抱き上げられて、一瞬驚きに身を竦ませるが、フジオミはすぐにシイナを浴室に運んでくれた。
そうして、熱めの湯をはった浴槽に、バスタオルを纏ったままのシイナを入れた。
「どう?」
「温かい……」
「よかった」
熱いお湯が、凍えた身体を温める。
実際は熱が出て寒気を覚えているのだが、汗をかいて一時冷えた身体には、心地よく感じられた。
浴槽の縁に頭を持たせて、シイナは浴室に漂う湯気の中、フジオミの腕を見ていた。
袖をまくっている両腕には、どこにも傷がない。
それだけで、安心する。
「ああ、顔色も良くなってきた」
ほっとしたようなフジオミの声。
「今、何時なの……?」
「9時過ぎだよ。君、医局から戻った後、何も食べずに休んだろう? 食事を持ってきたんだけど、眠っていたようだったから食事を置いて帰ろうとしたら、苦しそうな声が部屋の外まで聞こえてきたから、寝室に入らせてもらった」
「そう……嫌な夢を見たの。起こしてくれて良かったわ」
「今は、大丈夫かい?」
「ええ」
一瞬、心地よさに目を閉じてしまいそうになる。
「シイナ、ここで眠ると危ないよ」
「眠らないわ……ただ、気持ちいいから」
「じゃあ、君、そのままでいいから、髪を、洗ってもいい?」
フジオミの言葉に、目を開けて彼を見る。
何かの冗談かと思ったが、フジオミの表情は至って真面目だ。
断っても良かったのだろうが、今は、自分で身体を動かすのが億劫だった。
倦怠感が勝ったので、シイナは、そっと頭の向きを変え、縁に項をかけた。
「……まだ、頭痛がするから、あまり揺らさないで」
嬉しそうにフジオミが笑った。
「ああ、気をつけるよ」