ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~

「――」
 躊躇うシイナの手を、フジオミはさっきより強く握る。
「シイナ。こんな脅えた君を見ているのは辛いんだ。言ってくれ。力にならせてくれ」
 その言葉に促され、シイナは、息を吸った。
「……資料倉庫に、いたの。一人で。探していた資料があったから」
 できるだけ、平静を装うとしたが、声は震えて漏れた。
 鼓動が速くなるのは緊張のせいか。
 恐怖がぶり返してきたせいなのか。
「資料を見つけて、読んでいたら、いきなり、明かりが消えて……非常灯も点いてなくて、それで、倉庫から出ようとしたわ。そうしたら、いきなり、後ろから抱きすくめられて……」
 我知らず、フジオミの手を強く握りしめた。
「押し倒されて……身体を触られた……」
 フジオミが、強ばった表情で自分を見ていた。
 手が、さらに強く握りかえされた。
「シイナ、顔は見えた?」
「見えなかった……真っ暗だし、止めろと言っても止めなかった。だから、ペンを腕に突き立てたの。そうしたら、逃げていった……」
 あいている手で、シイナは胸を押さえた。
 甦る恐怖に、息が上手くできなかった。
「だから、明かりを消すのを嫌がったんだね」
 頷くシイナを、フジオミは切なげに見つめていた。
「抱きしめてもいい? それ以上は何もしないよ」
 返事をきく前に、フジオミはベッドの端に座り、シイナを優しく引き寄せた。
 触れられて強ばった身体は、恐怖をそのまま表していた。
 それ以上は何もしないとフジオミは言ったが、あの時の恐怖に支配されて、締めつけられているわけでもないのに息が苦しかった。
 フジオミは、そんなシイナを安心させるように優しく抱きしめて、その背をさする。
 そうして、時間だけが静かに流れていく。
 労るように優しく扱われて、シイナは身体の強ばりとともに、押しつけ、堪えていた感情が溢れてくるのを感じた。
「……部屋から出るのが怖い……」
 視界が滲んでいく。
「シイナ。約束する。二度と、君をそんな目に遭わせたりしない。誰にも触れさせない」
 シイナの手が、縋るようにフジオミの背中に回った。
「本当に? 守ってくれる? もう嫌なの。本当に、嫌なのよ」
「ああ。君の嫌がることはしない。他の誰にもさせない」
 その言葉に、シイナは肩を震わせて泣き出した。
 フジオミはただ黙って、シイナを抱きしめていてくれた。












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