ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~
普段より早く仕事を終え、部屋に戻る。
帰りもエレベータまでは歩き、そこからは無理をせず車椅子を使った。
「今日は早めに夕食にして、休もう」
「ええ。夕食までは、寝室で休んでいていいかしら」
「ああ。どうぞ」
寝室に入ってベッドに仰向けになる。
フジオミが出て行った気配がした。
きっと、着替えてから夕食を取りに行くのだろう。
本当に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
フジオミは、なぜ自分を愛するのだろう。
本来なら、その愛は、マナに向けられるべきものだ。
攫われる前のマナなら、きちんとフジオミを伴侶として受け入れていた。
描いていたはずの未来図が、なぜこんなにも歪んでしまったのかどうしてもわからない。
自分はそれを正すべきなのではないか。
再クローニングが成功すれば、歪みは直る。
クローニングなら、年齢設定が出来る。
必要な教育も誕生前に施せる。
すぐにでもフジオミの伴侶となれるのだ。
そこまで考えて、
「――?」
なぜか急に胸が苦しくなった。
詰まるような感覚に、シイナは身を起こす。
横になったせいかと思ったが、起きても胸が詰まるようなもやもやした感覚は消えてくれなかった。
まだ体調が戻りきらないうちに働いたから疲れているのだろうか。
心臓に負担をかけないように右側を下にして横になる。
それまでの考えが途切れたせいか、目を閉じると、程なく眠りに就いた。
「シイナ、夕食の支度が出来たよ」
ドアをノックする音とフジオミの声で、シイナは起きた。
浅い眠りだったのだろう。
「――今行くわ」
ゆっくりと起き上がり、ドアを開けるとフジオミが立っている。
「大丈夫かい?」
「ええ。顔を洗ってから行くわ。座ってて」
そのまま先に洗面所へ向かう。
気怠さを払うため、水で顔を洗う。
タオルで顔を拭くと、眠気も取れてすっきりした。
鏡の中の自分を見ながら、食事の後、フジオミに再クローニングのことを話そうと決意した。
食事の最中になど、できない。
そうしていい軽い話題ではないのだ。
言えばフジオミは傷つくだろうと、心の中で声がする。
それでも、言わねばならない。
最後の希望のために。