ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~

「シイナ、シイナ!!」
 身体を大きく揺すられて、シイナはようやく目を開ける。
「……フジ、オミ……」
 自分の声が重く頭に響き、鈍い痛みを感じた。
「帰って、来たのね……」
「ああ。それより、一体どうしたんだ? アルコールと一緒に睡眠薬を飲むなんて、無茶もいいとこだ。下手をすれば死ぬぞ」
 サイドテーブルに散らばる薬の包装紙と、アルコールを見たのだろう。フジオミの口調は優しかったが、内心の怒りは隠せていないのは感じられた。
 自分はまた、フジオミに迷惑をかけている。
 それとも、心配か。
 その違いが、シイナにはわからなかった。
 わからない自分が、惨めだった。
「眠れなかったのよ……」
 言葉は震えて洩れた。
 何も考えずに眠りたかった。
 ただそれだけだったのだ。
 それさえも、自分には許されないのか。
「――」
 涙がこぼれた。
「シイナ?」
 心配そうに名を呼ぶフジオミ。
 知っているのか。
 その名の意味を。

 シイナ。

 実をつけぬ木。
 何も残さず、残せぬ存在だと、そう呼んでいるのだということを。
「――」
 苦しかった。
 フジオミを見ていると、苦しくてたまらない。
 涙を抑えられない。
 彼が嫌いだった。
 憎んでいたと、思っていた。
 だが、それさえ嘘だった。

 愛を知らない自分が、彼を憎むことなど出来るはずもなかったのだ。

 そんな資格さえない。
 何もかもが――自分が信じてきたもの全てが、嘘だったのだ。
 自分には、何もなかった。
 最初から。
 それなのに、苦しみだけからは逃れられない。
 愛がないなら、誰も何も愛せないなら、いっそ何もかも感じなければいいのに。

 どうして自分は、こんな風にしかなれなかったのだろう。

 苦しみから逃れたかった。
 だが、この苦しみから逃れるには、新たな苦しみを受けるしかなかった。
 他には自分にはないのだから。
「フジオミ」
 だから。
「抱いて……」
 そう呟いた。







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