ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~
20 すれ違う心
フジオミは第二ドームでの問題を解決し終えるとすぐに戻ってきた。
シイナが心配で、気が気ではなかった。
戻ってみると、案の定、シイナは多量の睡眠薬とともに普段飲みもしないアルコールを摂取して、ベッドに倒れ込んでいた。
息があるのを確認するまで、自分の方が死にそうな気分だった。
一人にするのではなかった。
ただでさえ不安定なのに、青ざめてやつれ、弱り切っていた。
眠れなかったと涙を零すシイナは、以前の張りつめたような怜悧な美しさを失っていた。
だが、それでもシイナは美しかった。
愛しさとともにどす黒い感情がわき上がるのを恥じた。
弱っているシイナを見て、自分に頼り切っている彼女を見て、欲望を感じるなんて。
「フジオミ」
「?」
「抱いて……」
シイナの呟きは、小さかった。
だが、フジオミには聞き取れた。
一瞬、自分の心を見透かされたように思ったが、そういう意味ではないと言い聞かせた。
「――ああ」
フジオミは、シイナを優しく、けれど少し強く抱きしめた。
前より細くなってしまった愛しい身体を安心させるように。
だが。
シイナは抗い、フジオミを見据えた。
その表情は、苦痛を堪えたように歪んでいた。
鏡を見るように、今、自分もまた同じ顔をしているのだ。
決して重ならない想いを抱きながら。
「はぐらかさないで! 私の言っていること、わかっているくせに」
「シイナ――?」
戸惑うフジオミにしがみついて、シイナは激しく泣きじゃくった。
「苦しいのよ。お願い、救けて。どうすればいいのかわからないの」
「シイナ、何があった?」
彼女らしからぬとりみだしように、フジオミも動揺した。
自分の受けた恐怖でも、抑えた感情しか表さなかったのに、今はたがが外れたように声をあげて泣いている。
こんな状態の彼女を見るのは初めてではない。
一度目は、マナが去ったときだ。
だが、それ以上に彼女を脅かす事態など、存在しようもないはずだ。
それなのに。
「何があったんだ、君がこんなにとり乱すなんて――まさか、また襲われたのか?」
だが、シイナは答えない。
ただ首を振って答えることを拒み続けた。
シイナが心配で、気が気ではなかった。
戻ってみると、案の定、シイナは多量の睡眠薬とともに普段飲みもしないアルコールを摂取して、ベッドに倒れ込んでいた。
息があるのを確認するまで、自分の方が死にそうな気分だった。
一人にするのではなかった。
ただでさえ不安定なのに、青ざめてやつれ、弱り切っていた。
眠れなかったと涙を零すシイナは、以前の張りつめたような怜悧な美しさを失っていた。
だが、それでもシイナは美しかった。
愛しさとともにどす黒い感情がわき上がるのを恥じた。
弱っているシイナを見て、自分に頼り切っている彼女を見て、欲望を感じるなんて。
「フジオミ」
「?」
「抱いて……」
シイナの呟きは、小さかった。
だが、フジオミには聞き取れた。
一瞬、自分の心を見透かされたように思ったが、そういう意味ではないと言い聞かせた。
「――ああ」
フジオミは、シイナを優しく、けれど少し強く抱きしめた。
前より細くなってしまった愛しい身体を安心させるように。
だが。
シイナは抗い、フジオミを見据えた。
その表情は、苦痛を堪えたように歪んでいた。
鏡を見るように、今、自分もまた同じ顔をしているのだ。
決して重ならない想いを抱きながら。
「はぐらかさないで! 私の言っていること、わかっているくせに」
「シイナ――?」
戸惑うフジオミにしがみついて、シイナは激しく泣きじゃくった。
「苦しいのよ。お願い、救けて。どうすればいいのかわからないの」
「シイナ、何があった?」
彼女らしからぬとりみだしように、フジオミも動揺した。
自分の受けた恐怖でも、抑えた感情しか表さなかったのに、今はたがが外れたように声をあげて泣いている。
こんな状態の彼女を見るのは初めてではない。
一度目は、マナが去ったときだ。
だが、それ以上に彼女を脅かす事態など、存在しようもないはずだ。
それなのに。
「何があったんだ、君がこんなにとり乱すなんて――まさか、また襲われたのか?」
だが、シイナは答えない。
ただ首を振って答えることを拒み続けた。