ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~
シイナが泣き疲れて眠るまで、フジオミは優しい言葉を繰り返した。
彼女の不安を、少しでも取り除けるように。
何かが彼女を追いつめている。
その数多くの要因の中で、一番の原因は自分なのか。
苦しめたいわけではなかった。
それでも、結果として、自分は彼女を苦しめている。
見返りすら求めずに、ただ、愛したいだけだ。
穏やかに、気の済むまで、死ぬその瞬間にさえ忘れられないように強く深く。
だが、心は正直だ。
もうそれだけでは満たされなくなっている。
きれいごとでは、この感情は殺せない。
彼女が欲しくてたまらない。
彼女の全てが、欲しいのだ。
心ごと、独占したい。
他の何も見ずに、自分だけを見てくれればいい。
自分だけを愛してほしい。
そう。
愛してほしいのだ。
自分が想うのと同じくらい、彼女にも。
それが彼女を追い詰めることになっても、求めずにはいられない。
『フジオミ、シイナをこれ以上追いつめてはいけない。君を愛せないことを、彼女は苦しんでいる。愛したくないのではなく、愛せないのだ。そしてそれは、君のせいでもなく、ましてやシイナのせいでもない。決して持てない感情を、彼女にこれからも求め続けていくなら、いずれ君も不幸になる』
先日のカタオカの言葉が脳裏に甦る。
だが、自分には信じられなかったのだ。
そして、今も信じていないのだ。
永遠に、彼女が誰も愛さないのだということが。
自分でさえも持てるこの感情が、彼女の中にないのだということが。
シイナは確実に変わってきている。
険のとれた眼差し。
自分にかけられる穏やかな言葉。
時折見せる優しい感情。
以前と違って、笑顔さえ、自分には向けられる。
彼は初めて、微笑みだけで、幸福になれるのだということを知った。
そして、彼女の笑顔を見るために、何でも出来た。
それ以上を求めて、何が悪い。
もう彼女は、自分を嫌ってはいない。
あんなに嫌っていた、自分をだ。
顔も見たくないといった態度を知らず知らず見せるということもない。
だから、フジオミは確信したのだ。
愛すれば、いつか愛は返ってくると。
「君を苦しめて、それでも決して離さない僕を、君はいつか憎むだろうか――」
フジオミはシイナの細い首筋にそっとくちづけた。
「それでも、君を、愛してる…」