ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~
寝返りをうったことで、シイナは穏やかに目を覚ました。
ベッドサイドのほのかな明かりがかろうじてあたりを照らしている。
スクリーンを遮るブラインドの向こうは白み始めていた。
朝が来る。
しばらく、シイナはじっとしていた。
気怠さの残る身体を動かしもせずに、隣に眠るフジオミの顔を見つめた。
気を失ってから後の記憶が、シイナにはない。
互いに何も身につけていないところを見ると、フジオミは彼女を自分のベッドに運び、自分も休んだのだろう。
やがて、ブラインドから差し込む日の光が徐々に室内を照らし始める。
薄墨のような視界がゆっくりとあざやかな色を纏わせる。
そしてさらには濃い影を、そこに形づくった。
時間そのものの大いなる流れを感じさせるひとときだった。
こんなに穏やかな気持ちで朝を迎えたことなど、今まであっただろうか。
そして、隣にはフジオミが眠っている。
「……」
彼女は隣に眠る男の顔に視線を戻す。
その寝顔はいつもより幼く見える。
ふとシイナは悟った。
(私はこの人の、こんな表情さえ、見たことがなかった)
張りつめていたものが、静かに消えていくのを、シイナは実感した。
「――」
あの胸の痛みも、息苦しさも、もう感じない。
ただ静かに込み上げてくる感情に、不意に、涙がこぼれた。
「そうなの――?」
小さな呟きに、隣に眠る男が身動いだ。
閉じていた目蓋が、ゆっくりとシイナを探して開けられた。
「シイナ……?」
覚醒しきらぬ様子で、フジオミは手を伸ばしシイナの頬に触れた。
その確かな感触に、シイナは微笑んだ。
「泣いて、いるのか……」
シイナは小さく頭を振る。
「まだ早いわ。もう少し眠って」
「ああ……」
フジオミは素直に目を閉じた。
すぐに眠りにおちる彼は、子どものようにも思えた。
「――」
込み上げてくる思いに、今は名を付けなくても受け止められる。
ようやく全てが、自分の内で秩序を取り戻し始めていた。
静かな感情の余韻に浸りながら、シイナももう一度目を瞑った。