ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~

 シイナのいない部屋は、ひどく寂しく感じられた。
「――」
 もともと、眠るだけのための部屋だったが、ここ半年はほとんどシイナの部屋で過ごしていたからか、空虚に感じられる。
 空いたベッドには、ついさっきまでシイナが眠っていて、それだけで幸せだったのに。
 たかがクローンの報告を聞くためだけに、行ってしまった。
 否――たかがではない。
 あのクローンはどこか普通のクローンとは違っていた。
 だからこそ、シイナも行ってしまったのだ。
 自分を置いて。
 昨日の夜のことなど、何もなかったかのように。
「――」
 落ち着きを取り戻したシイナが怖かった。

 冷静になったなら、気づいたのか。
 やはり、昨日のことは間違いだったのだと。
 なかったことに、したいのだと。

「違う……」
 出て行く時のシイナは、最後に自分の手を握ってくれた。
 話すことがあると言ってくれた。
 あの眼差しは、自分を拒絶していない。
 昨日の夜だって、自分を受け入れてくれた。
 昨日のシイナは、従順で、愛おしくて、素晴らしかった。
 受け入れられて行うセックスが、あんなにも甘美なものだとフジオミは知らなかった。
 だからこそ、無駄にしてきたこれまでの時間を悔やむ。
 初めから、間違えていたのだ。
 言い訳など必要なかった。
 ただ、素直に、一途に、シイナを愛すればよかっただけだった。
「これが、罰か……」
 子供の自分に忠告した、ユカの言葉が、甦る。

――フジオミ、愛するなら、自分の心に素直に愛しなさい。一途に、それしか意味をなさないように、見返りも求めずにただ愛しなさい。呼吸が止まるその瞬間まで、忘れないように。それができなければ、あなたはいつまでも不幸なままだわ

 あの時から、ユカは全てに気づいていた。
 愚かな者は自分の愚かさに気づかないということを。
 何ということだろう。
 ユカの忠告を聞かなかったばかりに、今、罰を受けているのだ。
 愚かな子供が犯した過ちが、今、返ってきた。
 何倍もの後悔と苦しみになって。
 一人取り残され、不安ばかりが募っていく。
 遅すぎるのか。
 間違いを正すことは、もはや出来ないのだろうか。
「――」
 物思いに耽っていると、シイナの端末に、また通信が入った。
 今度はエマージェンシーではない。
 通信元は、研究区のラボだ。
 フジオミは、シイナの代わりに端末を開き、ラボとの通信を開いた。






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