ワンだふる·ワールド~愛しきワンコ達~ 《TABOO》
大いに盛り上がって、カラオケへと場を移す頃には、照準を合わせたのか、美沙はラブラドールにベッタリ。
他2人もシェパード、コリーとよろしくやっている。
私は残ったシーズーと仕方なくじゃれ合っていた。
途中、ハチ公に電話入れとこうと席を立った。
外で携帯を耳に当てると、背後から肩を掴まれた。
振り返るとシーズーが勘違いの真顔モード。
「彼氏?…だったら、今日だけは忘れて」
柄にもなく甘く囁いている。
――シーズーの分際で…上から?
「し ご と」
とキッと睨むと、怯えて逃げていった。
情けない。
フンと鼻を鳴らして、電話をかけ直す。
「迎えに行こうか?」
と出るなり忠誠心たっぷりのハチ公。
「終電には間に合うから、駅でいいよ。」
――ハチのお迎えは駅までってのが決まりでしょ?
鳴き止まないハチを宥めてると、また肩を叩かれた。
てっきりシーズーのリベンジかと思いきや、立っていたのは貴公子シェパード。
その堂々とした凛々しい瞳は、一矢で私の胸を射抜いた。
――ごめん、ハチ
――終電には間に合いそうもないよ。
END