天堂と十六夜
「十六夜、ちょっと出るぞ」
「はい、いってらっしゃい」
「いや、行くぞ」
どうやら一緒に出掛けるらしい。準備するため自室に行こうとすると自分の羽織を十六夜に掛ける。十六夜を抱き上げ飛ぶ
「どこに向かうのですか?」
「ん?すぐ着くからな」
質問には答えず十六夜の頭をぽんぽんとするだけ。はぐらかされても気にならず微笑んで胸に頭を預けた
次第に波の音と潮の香りがするようになり胸から顔をあげると眼下には青い海。白い砂浜に降り十六夜を下ろす
何をするわけでも無く懐から右手をだらんと垂らして、ただずっとどこまでも続く海を見つめている。不思議に思いながらその後ろ姿を見つめる
「十六夜…」
「はい」
どれくらい経ったのだろうか。しばらく波の音だけしか聞こえていなかったが唐突に話しかけられ顔をあげるがこちらを見ておらず相変わらず海を見つめていた