天堂と十六夜
「夢がある」
「……どんな夢ですか?」
前を向いたままで表情は分からないが声は真剣だった
夢
何だろうか。百鬼夜行の総大将なのだからずっとこのまま仲間を失わず百鬼と一緒に日本中の妖怪の頂点であり続けることか
そう思いながら次の言葉を待った
「十六夜とこれから授かるであろう命…それを守っていくことじゃ」
びっくりして言葉を紡げずただ背中を見続けているとゆっくり振り向いた天堂は笑っていてその笑顔が大人びているような、遊んでいる無邪気な子供のような…そんな笑顔にきゅんと胸が音を立てた
「もちろん総大将として百鬼を引っ張るし守っていく。今までは誰が一番とかは無かった。でも…十六夜と夫婦になって、これから子供も産まれるはずじゃ。そうなったら、ワシにとっての一番は十六夜とその子供じゃ。さっきも言ったが、だからって百鬼夜行を疎かにすることはしねぇ………だから十六夜。息子が産まれて百鬼夜行を引き継ぐまで、ワシを傍で支えてくれねぇか」
射抜くような強い、熱い視線に見惚れて何も言えなかったし実感が沸かなかった
確かに祝言を挙げて夫婦になったからいずれ子も産まれるはずだが、そこまで自分との未来を深く考えていたのかと思うと嬉しいのだが切ない気持ちにもなる