天堂と十六夜
「身体、何ともねぇか?」
「少し怠いだけで、何もないわ。ありがとう…」
抱き締めている天堂に応えて背中に腕を回したが、力が入らずすとんと布団の上に落ちた。無理して座っているのも良くないため背中を支えて横たえた
「大怪我した時に、夢、見た…」
「…どんな夢?」
手を伸ばして目が慣れていない十六夜のために自分側の障子を少しだけを開ける
「冥土に向かおうとしていたワシを呼び止めて、傷を全部治してくれた。天女みてぇだった…知らねぇか?」
あの時の十六夜は後光が差していて本当に天女のようだった。夢か現実か分からない。そのことがそう思わせたのかもしれない
「…えぇ…ありがとう」
礼を言われた意味が分からない天堂は十六夜を見て不思議そうに首を傾げる
掛け布団を握りながら微笑む十六夜
「大怪我してまで、私を助けに来てくれて……」
それを聞いた天堂はふっと笑って十六夜の頭を撫でながら口を開く
「それが当たり前じゃ、礼は言うな。ワシこそ――」