天堂と十六夜
「いざ、よい…殿……?」
「私をご存知なのですか?」
「妖怪であなたを知らない者は居ませんよ……初めてこんな近くで……ああ、美しい」
見惚れるように言った男に十六夜は軽く微笑んでありがとうございます、と言うと男は頬を染めた
「…そういえば百鬼夜行の大将と祝言を挙げられたのですね」
「はい」
「残念です、独り身ならば世の妖は放ってはおかないでしょう………ああ、本当に美しい…拐ってしまいたい、奪ってしまいたい…その男から…」
熱の籠った視線に絡め執られていると頬を撫で、首筋から肩をするりと撫でられた
びくっとした十六夜は困惑していてどうするべきか悩んでいた。このまま付き添うべきかどうか
「わたしとしたことが……わたしは愁穂(しゅうすい)と申します」