天堂と十六夜
夜泣き
よく遊び、よく昼寝をして、よく乳を飲む桜李に両親だけでなく百鬼も安心していた
そして――
「うわーーっ……んぎゃーー!」
夜泣きもすごかった
百鬼夜行が終わり、皆寝ついた頃いつものように夜泣きが始まった。百鬼夜行から帰って来て疲れている天堂はぐっすり眠っているため、起こさないように両手両足をばたつかせている桜李を抱いて本家の外に出た
月が出ているが辺りは真っ暗。ゆりかごのように腕を揺らしてあやしながら塀が囲っている本家の周りを歩いているがなかなかおさまらない
「うわーーっおぎゃあ、おぎゃあっ」
夜泣きは毎夜あり、それも激しくなかなかおさまらないのだ
「桜ちゃん、どうしたの~」
顔を真っ赤にして泣く桜李の涙を指で拭い、背中をとんとんする
十六夜は大妖怪で頻繁に寝ずともよいがこれには体力が必要だ。しかし十六夜は面倒とは思わず、ただただ愛しい思いが込みあげる
「んー、…ぐすっ……ふえっ……」
母親が微笑んでいるのを見て安心したからか、桜李はだんだん静かになっていく
「桜ちゃん、可愛いねぇ~……大丈夫よ、ねんねしようね…」
「あ~、きゃっ…」
可愛い、と言われたことが嬉しかったのか機嫌がよくなり笑いはじめた。紅葉のような小さい手を必死に母親に伸ばしている
「ん~、どうしたの?」
十六夜が人指し指を持っていくときゅっと握ってふにゃっと笑った。それから子守唄を歌いながらあやしていると小さい寝息が聞こえてきた
「…可愛い寝顔」
微笑んでなるべく音をたてないように本家の自室へ戻った