天堂と十六夜
「お帰りなさい…あ、ありがとう」
まだ覚醒しきっていない十六夜はぼんやりと夫の姿をとらえた
「あっ、こんな時間…」
「よく寝てたから起こさなかった、気にすんな」
そう笑った天堂に十六夜も微笑んだ。天堂が桜李を抱き上げると桜李も父の笑顔に笑った
――夜中、百鬼夜行から帰って来た天堂が眠りについたがその後待っているのは
「んぎゃーー、ふぎゃあ!」
夜泣きだ。
十六夜は毎夜と同じく抱き上げて散歩に出かける。あやしながら土手までやって来た十六夜は川に近づいて座った
「ん~、?……きゃっ」
川の流れる綺麗な音を聞き、涼しくなったからか泣き声が小さくなり始めたと思ったら笑い始めた
川に手を入れて水を掬った十六夜は桜李の前に差し出すと、桜李はきょとんとしながらも小さい手で水にさわると冷たかったためすぐに引っ込めた
「ふふ、桜ちゃん初めてだね」
関心を示して手を精一杯川に伸ばす桜李が落ちないように抱き抱えて川に近づけた
「ん~、おお!」
手で水をはね飛ばしてきらきら光る水玉に興奮する桜李に笑った十六夜
しばらく思い通りにさせてやると大人しく眠りについた
十六夜はすぐに帰らず土手に座って景色を眺めていた
夏だが川の傍でちょうどよく涼しい
しばらく桜李の寝顔を見ながら背中をとんとんしていた