天堂と十六夜


そして十六夜たちから少し離れたところに下り立った百鬼夜行。天堂の腕にはお包み姿の桜李がいた。何時間か振りに見る母の姿にふにゃっと笑って声をあげた


天堂と十六夜はこんなときに…と苦笑いしたが、すぐに十六夜を近くにいた妖怪が引き寄せて刀を首筋に突きつけた



『余裕だな、ますます憎い…』


そう笑っている妖怪とは反対に天堂の表情はさらに険しくなり、桜李は目をまん丸にしていた



「おい、ワシの嫁に何てもの向けてるんだ…」




『ふはは、十六夜は極上の女だ。お前だけいい思いしているじゃないか』


『我らにもな…』




「…大概にしろ」




愛する女を厭らしい言葉で馬鹿にした妖怪たちに怒った天堂の妖気が溢れ出た




『貴様がどれだけ強かろうとこれだけ距離があればどうにもできまい?』





そう言い、十六夜の首に刀を降り下ろそうとした。当の十六夜はいつでも逃げれると落ち着いていたのだが……桜李の大きな泣き声が響いた



『なんだっ、これは!』

『頭が割れそうだ…っ』



泣き声を聞いて妖怪たちは頭を押さえて呻き始め、百鬼たちは隙をついて十六夜の周りの妖怪を蹴散らした




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