天堂と十六夜
「ん?何か贈ろうと思ってたんだが迷ってな……そしたら主人がこれがいいって勧めるから買ったんじゃ」
店の主人の方を見ると年老いた男性がにっこり笑って頭を下げたため十六夜もつられて頭を下げた
「綺麗……ありがとうございます」
櫛を受け取ると天堂は頭を撫でる
「まだ見たいか?」
「ううん、ありがとう。行きましょう?」
天堂の手を取り、主人に選んでくれた礼を告げて店をあとにした
あてもなく散策していると女がおずおずと声を掛けてきた
「あの、すいません。」
話しかけられた十六夜は不思議に思いながらも応じる
「実は…これから琴を弾くのですが弾き手が足りなくなってしまい…琴、出来ますか?」
「…つまり琴を披露するのに弾き手が足りないから、私にその方の代わりを……ということですか?」
そうです、と困ったように肩を竦めた女
「やってやればいいじゃねぇか。お前何でも出来るだろ?三味線も舞も…」
「…分かりました、私でよろしければ」
女は笑顔を全開にして頭を下げて二人を店へと案内した