天堂と十六夜



「これを…ありがとうございました」


愁穂が差し出してきたのは看病の時に使った薄桃色の手拭いだった



「わざわざありがとうございます」


「琴、されてましたね…とても上手くて聞き入ってしまいました」


「あ、ありがとうございます…」


天堂は邪魔だと思ったのか、その場を離れてどこかへ行ってしまった


「今の、方が……総大将、ですか…」



「?…はい、そうです」



「…そう、ですか…」


表情が曇った愁穂を不思議に思いながらも十六夜は特に気にしなかったのだが…
次に愁穂の言ったことに耳を疑った


「あのっ、あなたが好きです!あの方が夫なのは承知してます…ですかずっと忘れられないんです!…十六夜殿っ」



抱き締めてきた愁穂に困惑して何も言えなかかった十六夜はただ身を捻るくらいしか出来なかった


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