天堂と十六夜
「あ、あの、愁穂さんっ…ちょっと…」
「……分かっています。この想いを伝えるとあなたは困ると…ですが苦しい…愛してます、十六夜殿…」
頬を挟まれて顔が傾き近づいてきたとき
「十六夜!」
天堂が帰って来て直ぐに十六夜を引き離し背中へと隠して威圧するように愁穂と向き合った
「何しやがる」
この男が十六夜が愛し愛されている男
その存在が現れ、嫉妬の炎が心を焦がす
「これはこれは…旦那様ですか。急ですが…わたしは十六夜殿を愛しています…わたしの方が十六夜殿を幸せに出来る…あなたから奪わせて頂きます…それでは十六夜殿、また会いましょう…」
十六夜に向ける態度とは一変して不気味な笑みを見せて帰っていった
「大丈夫か?」
裏通りに入り抱き締めた天堂に十六夜は温もりを求めるように天堂を抱き締め返して頬擦りしながらほぅっと息を吐いた
温かく安心する…
愁穂に抱き締められて頬を触られた時は冷たく、笑みが逆に恐ろしかった