天堂と十六夜
夜、天堂の腕に包まれて寝転んでいた。天堂は百鬼夜行が終わり十六夜を腕におさめてすぐ眠りについた。だが十六夜は違った
「…っ、」
天堂を起こさないように腕から抜け出して足音をたてずに、だが急いで台所へ向かった。そしてすぐ盥に水を張り、嘔気づいた。つわりだった
「…ぅ……っ、はぁ…」
うがいをして口に手を当てて座り込み、棚に背を預けて呼吸を整えていた
「大丈夫かっ」
目を醒ますと十六夜が居ないことを不安に思い、探していると目に入ったのは盥に吐いていた。十六夜を見つけた瞬間駆け寄って来て背中を擦った
「ごめんなさい…っ、寝てたのに…」
「そんなのいいに決まってるだろうが!…大丈夫か!?」
嘔気で涙目になりながら謝った十六夜に天堂は叱りながら背中を擦り続けて、額や首筋に光っている汗を拭う。白い長襦袢に藤色の帯をしている十六夜の肩や背中は小さく骨が当たる。こんなにも苦しんでいるのに男は何も出来ないのか
「はぁ…もう大丈夫、ありがとう」
しばらくそうしていたが笑った十六夜に安心した天堂も微笑んだ。歩くのは辛いだろうと思った天堂は十六夜をゆっくり抱き上げて自室の布団に横たえた