天堂と十六夜
「……てっ」
横で様子を見ていた鶴は微笑んだ。天堂の要件とは…
「ん"ー、難しいなぁ……女子(おなご)はよくこういうのが出来るのぅ」
腹帯を縫う、ということ。だから鶴に腹帯の縫い方を習おうとやって来たのだ。試行錯誤しながら白い布と針を睨んでいる天堂に鶴は手を止めさせた
「少し休憩しましょう」
鶴は茶を淹れて持ってきて座り直した
「おぉ、すまねぇな」
「詳しくは聞いておりませんでした…何故、腹帯を?」
茶を啜っていた天堂に問いかけた鶴。天堂は湯飲みを置いてまだ少ししか出来ていない腹帯を指でいじりながら笑った
「しばらくしてこれをつけるんじゃろ?身籠っているときは腹、冷やしちゃいけねぇからな…ワシも不安じゃが十六夜が一番不安じゃ、初産だから余計に。ワシがこれを作ってやることで少しでも不安を軽くしてやれるなら嬉しい…それに…」
「それに?」
急に話さなくなった天堂を不思議に思い、促した
「それによ…十六夜が頑張ってるからワシも何か一つ頑張りてぇんだ。それが十六夜のためになるなら尚更じゃ。」