天堂と十六夜
あれからの日々が穏やかに過ぎていった
百鬼たちも生活を助けてくれて苦痛もなく過ごせている。天堂が作ってくれた腹帯もつけている
十六夜は大妖怪。つわりはあったが、症状がほとんど無かったのが幸いだ
だが十六夜の妖力は腹の子へと注がれるため十六夜の力は多少落ちていた
現在は弥生
大きな腹を抱えて天堂と縁側に座って日差しを浴びているがまだ寒い。天堂は雁蔵の言い付けを守り、身体を冷やさないようにと普段の羽織りよりも生地が良質で温かいものを何枚も着せていた
また座布団を敷き、足にも毛布をかけて十六夜の体調管理に気をつけていた
天堂が居なくなったかと思えばすぐに戻って来て、手には湯飲みがあり十六夜に手渡した
「茶だ、冷やさないようにな」
笑った天堂に礼を告げ一口飲んで近くに置いた
天堂は十六夜の大きくなった腹を撫でているとぽこっと胎動を感じて目を細めた
「随分と大きくなったな。それに触ったりしたら動く…産まれそうじゃねぇか」
「本当に…どっちかな、楽しみ…」
腹が動く度に新しい命だけでなく自分の身体まで愛おしく、腹を撫でている天堂の手に手を重ねて微笑んだ